http://www.api-magazine.com
インドネシア・ポップス
インドネシア・ポップス(I-POPS)の素晴らしさをもっと日本の皆様に知ってもらいたい!!バリ島やインドネシアと聞くとすぐに「ガムラン」「ジェゴグ」などの伝統芸能を思い出しがちですが、こちらの音楽文化はそれだけではありません。「アピ・マガジン」はこちらの若者の間で流行っている「インドネシア・ポップス」にフォーカスし、毎月アーティスト紹介や新譜紹介をしていきます。ぜひバリ島やインドネシアに来たときには、インドネシアのアーティスト達の音楽CDを購入し聴いてみてください。また新しい発見がありますよ。(言葉の勉強になるかも!?)
● ● ● ● ● ● ● ● i-pops listener ● ● ● ● ● ● ● ●
 
ホソルダ・スギアルト
ホソルダ・スギアルト   蓮次郎子 蓮次郎子   キャンディー・甲山 キャンディー・甲山
インドネシア音楽、
特にダンドゥットに傾倒する
アピ編集部・山の親父。
インドネシアのロックと
芸能ゴシップ好きな
アピ編集部・オンチェ命ミーハー主婦。
何を思ったか、インドネシア音楽界で
デビューを目論む中年男
自称音楽デザイナー

インドネシア・ポップス > Vol.52

バックナンバー
MOCCA(モカ)
スウェディッシュな雰囲気のアコースティックなギターサウンドと英語の歌詞で西ジャワの都市バンドゥンのインディーズシーンから一挙に世界デビューした異色のバンドMOCCA。1997年にアリナ(ボーカル&フルート)とリコ(ギター)がキャンパスで活動を始め、後にトマ(ベース)とインドラ(ドラム)が参加し、1999年にインディーズシーンで本格的なバンド活動をスタートした。2003年のメジャーデビューアルバム「My Diary」(品切れ、再プレス中)は、ある少女と恋人の出会いから別れまでの物語というコンセプトでアルバム全体を統一、1曲1曲が物語の一場面になっており、主人公の気持ちの変化をワルツやボサノバ、ロック、70'sディスコ調などサウンドで表現するという非常に凝ったもの。このアルバムによってMTVインドネシア、MTVアジアの新人賞を総嘗めにし、世界中で12万枚のセールスを記録した。2005年に2作目の「Friends」をリリース。メンバー全員がインテリアデザインやプロダクトデザインといったアート系の大学を出ているのも異色の経歴。「Friends」は日本の大手レコード店で入手可能。
ディスコグラフィー
My diary   My Diary
(2003年リリース)
 
 
アルバム評
 
Friends
【収録曲】
1. On The Night Like This
2. I Think I'm In Love
3. My Only One
4. Friend
5. Lucky Man
6. I Would Never

7. You And Me Against The World
8. Buddy Zeus
9. This Conversation
10.How Wonderful Life Would Be
11.Swing It Bob !
12.It's Over Now
Friends(2005年発売)
 
<ホソルダ・スギアルト> 
育ちが良い美大のお嬢さんとお坊ちゃまが品良く仕上げました、ってな感じ。全曲英語でサウンド的にもインドネシアのカラーを一切排除。インドネシアのカーディガンズと呼ばれる(「だから何なんだ」と言うと終わってしまう空しさはある)。ジャケットもそうだがレトロ風味でネオ・アコとしては括れないポップス全盛時代を再現したこの作品は「往年のジャズやR&Bのベスト盤を聴いている感じ」というコンセプト?リスナーの国籍を選ばない仕上がりで、Go Internationalではなく、Never Domesticだ。外国人にはあっさり聴こえるが、インドネシアではかなり異色の相当なフェチ&マニア・サウンド。インドネシアらしくないものが海外でウケるというのは「考えモノ」じゃないのか?(あー、年取りたくない)
  <蓮次郎子> 
海外で売れているのも納得。ネオアコースティックとでもいうんでしょうか、これはもうインドネシアポップスではありませんね。ボーカルの声が女の子女の子していて歌詞のトーンとも相まってとてもかわいらしいです。インドネシアの歌手が英語の歌を歌うと妙に力んだようになりがちですが、あっさりスマートに歌いこなしています。彼らの母国インドネシアでMOCCAが好きだというのは相当オシャレでチャンギーな人たちでしょう。私の周りでは聴いている人はおろか、MOCCAを知ってる人はひとりもいませんでした。田舎だからな〜。
  <キャンディー・甲山>
これを読んでいるみなさん、今回は間違いなく「買い」ですよ!僕の大好きなMOCCAの登場です。切なくおされでキュートなバンドゥンのインディーズバンド。Cardigansとか好きな方、絶対後悔させません、というかCardigansなんかよりはるかに良いぞ!渋谷系が煮詰まって遂に到達出来なかった、直球勝負の現在進行形ノスタルジアがここにはあります。ちょっと冷静に解説しますと、音はアコースティックな北欧系ポップ、でも温度感はもっと暖かくジャジーでラウンジー。個人的印象としては Fairground Attraction の傑作アルバム "The First of a Million Kisses" に極めて近いです。そこにシンプルなメロディーと恋愛オムニバス風の英語歌詞が乗ります、で、それら各ストーリーはアルバムの結末へと集約してゆく・・・・・とか分析しようと試みつつ、ゴメン、やはり大好きだから冷静に書けないぞ。あなたがどこで聴いていようと、そこがMOCCA空間になってしまうような、そんな素敵なアルバムです。日本でも大手CDショップで手に入るらしいけど、インドネシアなら空港で買っても\1000くらい。それにデジパックのジャケデザインもシックでいかしてるよね。ともあれ他の二人がどんな事を書いていようと、今回は僕の言うことだけを信じて買ってチョーダイ!
曲評
■1. On The Night Like This
★ホ:アルバムのイントロダクションとして挿入されたアコギ弾き語り風。虫の声もマッチしていい感じ。アルバム全体の流れとして無理なく耳に流れ込んで来る。

★蓮:虫の声がする夜にアコースティックギターを抱えてテラスで歌ってます、というシチュエーションそのまんまの曲。

★キャ:こうゆう経験ありませんか?僕は1979年の10月30日を思い出しました。高校で文化祭の準備をしている夜でした。これ以上は恥ずかしくて書けません。そんな短くて切ない曲です。
■2. I Think I'm In Love

★ホ:前曲を受けた弦楽四重奏のイントロから一気に50年代ポップスの世界へ。大滝詠一が喜びそうなアレンジ(笑)。フェイドアウトも今では珍しい。この曲はサビの部分がCMでも使われ知っていたが、昔の洋楽だと思っていた。

★蓮:さかんにCMで使われていますがイントロはワルツ調だったんだ...。改めて聞くとめっちゃかわいい曲なのでした。それにしてもどこかで聞いたようなサビ....。竹内まりあ?。

★キャ:イントロのセンス良いヴァイオリンアンサンブルがおされ。たった一回しか出てこないけれど、ちゃんと途中のギターアンサンブルで辻褄合わせてま す・・・・・なんて細かいことはどうでもよろしい!こんなことがあったら、それはきっと恋に落ちている、という曲。僕は1979年の・・・・・。

■3. My Only One
★ホ:70年代からの録音技術の進歩をまるっきり無視したようなリバーブのかかり具合までクラシックな音作りが上手いレトロ・フェティッシュな仕上がり。達郎やサザンもこういうのを作ってたなぁ。

★蓮:一緒に聴いていた同僚の女の子いわく「トミーフェブラリーみたい」「トミーフェブラリーより上手い」そうです。

★キャ:しかしMOCCAの曲はシンプルでツカミがいいよなあ。この曲では「エッブリーデイ アンド エッブリーナイト」というところですが、つい一緒に歌ってしまいます。こうゆうのがポップスで重要なとこなんだよなあ。ストーリーとしては、好きな彼とケンカしちゃったんですね。なんでだろう?きっと些細な原因なんだろうなあ。
■4. Friend
★ホ:ジャジーなポップ。Nanaとか聴いた?ルーツにスウィングを持たないインドネシアでこのスウィング感とライブっぽさは貴重。

★蓮:すんなり聞いてしまいました、以上。アルバムタイトルの曲ですが「????」

★キャ:アルバムタイトル曲の "Friends" です。人によっては「なんだ、きれいごと並べたような曲じゃねえか」という感じだと思いますが、綺麗事上等。もしかして3のケンカの件で友達に相談したのかな?とか、語られていないストーリーも想像出来ますね。だんだんジュディー・ガーランドとミッキー・ルーニーの学園物映画みたいな感じになってきたぞ。
■5. Lucky Man
★ホ:ちょっと辺境のカントリー風で、昔のオリビア・ニュートンジョンな感じ。いや、香港から連れてこられたアグネス・チャンかも。さりげないハーモニーが美しい名曲。

★蓮:ギターとピアノメロディといいボーカルのかわいらしい声にかぶるコーラスといいとにかくきれいなきれいな曲です。心が洗われます。

★キャ:ちょっと意味深な感じの曲っすね。これはもしかしてもう一人の女の子が、片思いの(仮)ミッキー・ルーニーへの気持ちを表現した曲だろうか?しかもその子は、4で(仮)ジュディー・ガーランドの恋の相談に乗ってた友達だったりして。切ないねえ、邪推だけど。あなたは「ラッキー」な人なんかじゃない、そんな彼女とめぐりあえて「とてもラッキー」な人、とどこか悲しげに歌っております。
■6. I Would Never
★ホ:Club8(スウェーデンの人気ユニット)のボーカリストKarolinaが2コーラス目から参加。ちょっとソフィア・ラジュバっぽいアンニュイさで始まり、Arina よりも濃厚で甘ったるいKarolinaの声とトロピカルな空気感のするアレンジが一体化して心地いい。ドンシャリ発明当時の70年代後半的ドラムの音もマニアは要チェック。独り電車に乗って窓の外を眺めているような雰囲気。アルバムではこの曲が一番好きになった。

★蓮:くり返されるフレーズが懐かしい感じです。それにしても本当にきれいな曲を作る人たちだなあ。コーヒーじゃなくてハーブティーとか飲んじゃうタイプなんだろうなあ(意味不明)。

★キャ:もろタンバリンスタジオっぽい楽曲ですね。Club 8のKarolina
Komstedtが共演です。といっても僕この人知らないんだけど、もしかしてスウェーデンの人?ちょっとくぐもった声で良いコントラスト出してます ね。ともあれこれも鼻歌度高い良い曲なんだけど、歌ってる自分がキモいよなあ、っていつも思います。
■7. You And Me Against The World
★ホ:ちょっとレトロから離れて70年代初っぽい爽快感のあるナンバー。ガレージか?今時このスカスカサウンドでOK出すにはかなりの自信と勇気が要るハズ。エイズ撲滅活動家Baby Jim Adityaに捧げた曲らしい。

★蓮:歌詞に合わせてカウントが入るといった小技が憎いです。小気味よくてアルバムの中で一番好きな曲。

★キャ:ヴォーカルのArinaちゃんがキュートだね。特に1,2,3,4,というとこが体操のお姉さんみたいでいい!実はけっこう年だったりして、とかいう考えもよぎるのだが、そんなこともどうでもよろしい!ところでほとんどの曲を作っているギターのRiko君だけど、ギターを持ったルックスも、さながら初 期の田島貴男って感じですね。ポップスのおいしいとこを素直に咀嚼してます。ともかく有名になっても気負わないで、このままのスタンスで作り続けて欲しいな。それから根拠無いけど、MOCCAの人達はトマトジュースが好きだ、と僕は考えます。
■8. Buddy Zeus
★ホ:これまたSP盤の世界。目の前で演奏しているかのようなノー・リバーブのマイク2本一発録りな仕上がり。歌い方も時代背景に合わせて歌い分けているのもマニアック。ループノイズはダサいから針飛びさせて欲しかった(笑)。

★蓮:歌詞に合わせて犬の泣き声が入ってるようなセンスがおしゃれです。サックスがレトロな雰囲気ですがこういうのはジャズっぽいというんですか?ジャズ苦手なので良く判らないですが....。Zeusはメンバーの愛犬の名前。

★キャ:さてこれは一息ついて、イヌのZeusについての曲ですね。大事なデートの前に困った事をやらかすような、でもかわいいやつなんです。クラリネットのマ ヌケな音色がZeusの様子を想像させてくれます。まるで昔のスタンダード曲みたいにすんなり聴けちゃうこんな曲を作ってしまうなんて、Arinaちゃんもただもんじゃないぞ!彼女はRiko君に比べるとジャズ指向なのかな?11も彼女の作品です。彼等の引き出しの広さと余裕を感じます。
■9. This Conversation
★ホゴージャスなビッグバンド風イントロで始まり、きらびやかなミュージカルの挿入歌のよう(きっとスリットの入ったドレスで腰揺らして歌ったんだろうな?)。ボブ・トゥトゥポリも入ったらチカチカ・ネオンが見えてきた(笑)。お決まりのエンディングで舞台の幕が下りていきましたとさ。めでたし、めでたし。

★蓮:デュエット。メンバーが好きなシンガーにフランク シナトラをあげていましたが、そんな雰囲気の古き良きハリウッド映画チックな曲です。

★キャ:ゲストシンガーのBob Tutupolyがベテランショービズ系のいい味出してますね。昔のハリウッドラブコメディーなんかで画面が真ん中で分割されていて、一方が彼女でもう 一方が彼、なんていうのありましたよね。で、二人とも同じ事を相手に伝えたいのに、やはり言い出せない。最後は両方の画面から「やっぱりそんな事言えな い!」と同じセリフでシーンが終わる。そしてそんな恋の行方は・・・・・この場合あまりハッピーな展開じゃなさそうです。
■10.How Wonderful Life Would Be
★ホ:ムード・サックスがブローしまくるイントロから、日本にもあった戦後の「ブルース」。アジアではこの形態の音楽から様々な音楽スタイルが派生していった。ムラユー歌謡に有ったこの湿り具合がアジアでは一番グッと来る所だったのに、今では完全に時代に抹消されドライになってしまった。

★蓮:イントロのサックスを聴いて「悲しい色やね」を思い出しました。

★キャ:やはりそうだったの・・・・・9の後で何かあったんだろうな。もうアタシはMOCCAの見事なストーリー展開に飲まれて完全妄想モードですが、その流れ を抜きにして聞いていても、一貫したカラーの中で各曲が水準以上の持ち味を出していて見事。この曲はアルバム中唯一のマイナー調な曲で、昭和歌謡風レトロメロディーだけど、サラッと聞かせてあざとく無いのがいい。この部分は日本のレトロ系アーティストも見習ってほしいね。ラウンジはあくまでも上品じゃなきゃダメです。彼等がP.ラムリーのカヴァーとかやったら面白いだろうな、と思いました。
■11.Swing It Bob !
★ホ:またもやボブ・トゥトゥポリとデュエットで戦前のビッグバンド時代へワープ!復刻CDじゃなくて骨董店で蓄音機まで買ってSP盤とか集めたんだろうな。完全にインドネシア人とは関係ない世界に仕上がって、良かったね!(ん?)

★蓮:ジャズ系が苦手でまったく聴かないので「うへー」と思いながら聴いていたらタイトル通りに途中から色々なダンスのリズムが入っていてちょっとほっとしました。

★キャ:ニクいなあ。唯一のマイナー曲の後にビッグバンド・スウィング、もうほとんど黄金のMGM映画ですね。9でも登場のBob
Tutupolyが再登場、ここでは(仮)モーリス・シャバリエ演じてます・・・・・なんて言っても誰もピンと来ないだろうけど。ともあれ僕には彼等がこのアルバムでやりたいこと、すごく共感できる。昨年のことなんだけど、クタのカフェで隣に座ってる感じのいい若者に話しかけられて、その彼が「MOCCAというバンドのメンバー」だと言ってたんです。ああ、もっと仲良くしとくんだった!連絡先のメモも無くしちゃったし・・・・・トホホだな。
■12.It's Over Now
★ホ:ちょっとモータウンっぽい?ギターの身から出たリフがかなりセンス良い。アルバムの最後にこういう何でもないような曲を入れるセンスがまた良い。それにしてもこの空間は昔のR&Bのスタジオ一発録りのような雰囲気をシミュレートしているが、分かる?(分かんねーよ!)

★蓮:最後の曲がIt's Over Nowっていうことで、やはりこのアルバムにもしゃれた仕掛けがしてあったのかな?私には判りませんでした。さて、こってり風味が恋しくなったところでニタ タリアのCDでも聴くとするかな、“グリサーグリサーグリサーグリサー.....。

★キャ:で、パーティーの後はお決まりの結末なんですが。これも女の子の意志の強さというか、怖さというか。個人的には1980年の9月にポッカリ開いた心の空白を思い出しましたよ。ともあれ誰もが一度は思い当たる、恥ずかしくてホロ苦い記憶の断片が詰まったMOCCAの映像的エンタメアルバム"Friends"でした。音楽的に玄人なテクも詰まった上質のアルバムですが、ともあれあなたのお部屋で流してみてください。ちょっとだけ何かが変わるはずです。変わらなかったあなた、Peterpan聞いてください。
2005年10月号より
アピ・マガジンに関するお問い合わせはこちらまで / Copyright (C) 2007 Api-magazine All Rights reserved