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インドネシア・ポップス
インドネシア・ポップス(I-POPS)の素晴らしさをもっと日本の皆様に知ってもらいたい!!バリ島やインドネシアと聞くとすぐに「ガムラン」「ジェゴグ」などの伝統芸能を思い出しがちですが、こちらの音楽文化はそれだけではありません。「アピ・マガジン」はこちらの若者の間で流行っている「インドネシア・ポップス」にフォーカスし、毎月アーティスト紹介や新譜紹介をしていきます。ぜひバリ島やインドネシアに来たときには、インドネシアのアーティスト達の音楽CDを購入し聴いてみてください。また新しい発見がありますよ。(言葉の勉強になるかも!?)
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蓮次郎子

蓮次郎子

インドネシアのロックと
芸能ゴシップ好きな
アピ編集部・オンチェ命ミーハー主婦。

キャンディー・甲山

キャンディー・甲山

インドネシア無宿、東京では引きこもりの中年男。近ごろ年のせいか早起きになりました。

インドネシア・ポップス > Vol.62
年齢不詳の若々しくロマンティックな歌声と詩的な歌詞、心に響くサウンドでインドネシア国外にもファンを持つカトン・バガスカラ。幼い頃から自作の唄を唄っていたというカトンは、ガルーダインドネシア航空のキャビンクルーとして働きながら友達のLilo、Adi、AriとKla Projectを結成。貯金をはたいてスタジオ録音したサンプル曲「Tentang Kita」がプロデューサーの目にとまり、1989年、アルバム「KLa Project」でデビューを果たす。'90年リリースのセカンドアルバム「KLa ”Kedua” Project」は'91年国内で一番売れた『テクノポップ』アルバム賞を受賞。シングルヒットとなった「Yogyakarta」は時代を越えて愛される彼らの代表曲となった。その後も「Pasir Putih('91)」「Ungu('95)」などベストアルバムを含め8枚のアルバムをリリースしている。
カトン自身の本格的なソロ活動はアルバム「Damai dan Cinta(’00)」を初めヒットアルバムとなった「Percaya Saja(2003)」最新アルバム「Lovaholic28(2007)」は通算5作目となる。2005年、クリスダヤンティ、マルセル、アチェの津波被災者支援の5月には名古屋と大阪でアチェ被災者支援のコンサート、8月アメリカ3都市でライブツアーとグローバルな活動を展開。2007年5月「Lovaholic28」を引っさげて来日予定。「5月のショーには日本のファンの皆さんに聴いてもらえるよう最新のCDを持っていきたいと思っているんだ、YOICH IKEDAと一緒に作った日本語の曲もそのショーで歌うつもりだよ、皆さんに喜んでもらえるといいなあ」とのこと。
ディスコグラフィー
カトン・バガスカラ
<Katon Bagaskara ディスコグラフィー>

Damai dan Cinta(2000年)
収録曲:Buka Mata、Negeri di Awan、Dinda Dimana、
Di Relung Kamarku、Doa、Sampai Kapan、Si Muda、Aku dan Renjana
Koleksi(2001年)

収録曲:Dengan logika、Cinta Putih、Bukan Semata、Seketika
Ruang Hampa、Selasih、Tidurlah,Tidur、Anak Negri



Percaya Saja(2003年)
収録曲:eniti Hutan、Cemara、Malam-malam、Panjang Dara、Wajah Tersenyum
Pasangan Jiwa、Harmoni、Menyentuh、Kenali Dirimu、Merapi

Kidung Cinta(2004年)
収録曲:Bila Kau Ada Waktu、Lara Hati、Kuajak Serta、Selembut Awan、
Kau Tlah Warnai Hidupku、Lagu Radya、Ketika Kupulang、Luar Biasa、Daun Gugur

アルバム評
Love Holic
■Lavaholic28(2007年リリース)
収録曲
1. Mungkinkah Terjadi:起こりえるのか
2. Kepinta Kembali :復活への願い
3. Separuh Hati:心の半分だけ
4. Ikut KehendakMu:あなたの望むままに
5. Tak Lagi Sama:もう同じじゃない
6. Nyanian Jatuh Cinta:恋におちた歌
7. Hanya Manusia Biasa-Feat Siti KDI:
ありきたりの人間
8. Bawalah Hatimu:心を持ち寄って
9. Menanti Jawabmu:君の返事を待つ
10.Duri Di Hati:心の棘
11.Cinta Terlarang:禁じられた愛
12.Pulang Padamu, Jogja:
ジョグジャ、君のもとへ帰るよ

<聞いた人その1:キャンディー・甲山:インドネシア無宿、東京では引きこもりの中年男。近ごろ年のせいか早起きになりました。>
「インドネシアの友達が東京でコンサートするから紹介するわ。ついでにお茶の水の楽器屋さんとか案内してくれへん?」と、大阪の友人が突然やってきた。一緒にコンサート会場の目黒インドネシア人学校へ出かけると、そこにひときわ強いオーラを放つ男が。そのとてつもなく大きな笑顔!隣にはこれまた口角の上がった笑顔美人が、なぜかユニクロの袋を抱えて寄り添っている。まるでテレビの芸能人がそのまま飛び出してきたようなカップル、それが3年前はじめてKatonと奥さんで女優のIraちゃんに出会った時の、強烈な第一印象でした。
 それまで正直、名前だけ知っているKLA ProjectというバンドとKatonとの関係、そして以前から耳にしていたであろう彼の曲、という情報の断片が全く結びついていなかった。しかしリハーサルで彼の歌を聴きながら、「あっ、これKLの空港で流れてた極甘メロディーだ」「プトゥ(バリの友人)が昔の失恋話しながら、カーステで流していた80s'風の曲だ」などと納得したのでした。そうか、あれは彼の曲だったんだな、と。
 見かけはもろ芸能人のKaton夫妻だけど、その人柄は至って気さく。コンサート終了後は誘われるままに彼らの宿舎であるインドネシア大使館の迎賓館におじゃまして、それから二日間東京を一緒に歩き回りました。新しいギターを手に入れて上機嫌の彼が、いきなり山手線の車内でミニコンサートをはじめちゃう、なんてこともあった。そんなこんなで仲良くなった僕は、彼らに頼まれた100円ショップの押し入れ用衣装袋をみやげに、そのひと月後にジャカルタのKaton宅を訪問したのでした。
 Katonが今回のアルバムのために楽曲を用意し始めたのは、ちょうどその頃だったんじゃないだろうか。彼がギターで弾き語りする曲の断片について何度も意見を求められ、ついでに2曲ほどアレンジャーもやらしてもらいました。興味深かったのは、彼の自分の作品に対するジャッジが非常に客観的だったこと。「作品を作るのはアートの領域だけど、作品を聴くのはリスナーの領域だからね」ということで、いかに否定的な意見でも冷静に咀嚼し、納得すると作品に反映させる。これってすでに地位を確立した人にとって、なかなか出来ることじゃないです。
そうして届けられたこのアルバムですが、まるで僕が知るKaton本人の写し鏡のような、とてもパーソナルな作品だな、と思いました。一見するとクールで理知的だけど、一皮めくると人情と葛藤のマグマが噴き出しそうな、そんな彼の生身な人間性が楽曲に投影されている。だから聴き返すたびに、それぞれの曲がより親密に感じられるようになってくる。ちなみにアルバムタイトルの数字「28」は、Katon・Ira夫妻の記念日に由来しています。
<聞いた人その2:蓮次郎子:インドネシアの芸能ゴシップとロック好きなオンチェ命ミーハー主婦>
カトン・バガスカラの3年ぶり5作目のソロアルバム。アルバムタイトルを見て「Lovaholic?28?恋愛依存症の28例?」などとロマンのかけらもない想像をした私ですが、アルバムに詰め込まれた『やさしいハッピーな何か』に引き込まれて何度も繰り返し聴いてます。カトンの表現する「愛の喜びと痛み」は男女の愛、家族の愛から、思い入れのある場所や其処へ住む人々への愛まで広がっていてもうなんだかとどまるところを知りません。んでもって自然体なのはさすがの貫禄です。日常のあれやこれやに疲れている方、恋人や家族と会話してないなーという方、最近笑っていないという方、ぜひ繰り返して聴いてみていただきたい珠玉のアルバム。
曲評

■1.Munkingkah Terjadi
:新しいのに懐かしい不思議なサウンドの曲。親友の恋人と恋に落ちてしまったという苦悩の歌詞なんですが「そんな小さいこと気にしない気にしない」というかのようなサビの美しいコーラス(バックコーラスもすべてカトン本人)と後半Starshipのようなスペーシーなスケールの大きさが心地いいです。
 
■2.Kupinta Kembali
去って行った恋人を想うロマンティックなナンバー。Payの透明感のあるギターサウンドとカトンの静かだからこそ痛切なヴォーカルが切ない系大好き浸るの大好きなインドネシアのリスナーの心を捉えたようでシングルヒットしています。Kembalilah Kekasihkuなんていうダサダサなタイトルにしないあたりがカトンの歌詞が詩的に突出しているといわれる所以なのでしょうなきっと。
 
■3.Separuh Hati
Katonの曲作りのユニークなところは、彼が常にリスナーとの共鳴ポイントを出発点にしているところ。わかりやすく言えば「さあ、ご一緒に!」の部分から曲作りしている。この曲にはそうゆう共鳴ポイントが随所に隠されていて、リスナーはついつい、ラジオの前で一緒に歌ってしまうのだ。だけどそれがあざとく聞こえないのは、やはり彼が本能で作っているからなんだろう。
 
■4.Ikut Kehendakmu
★キ:今回のアルバムは、各楽曲ごとに静と動のキャラクターが際立っているのが特徴だけど、これは前者の代表のような曲ですね。彼自身が敬虔なクリスチャンでもあり、そのせいか僕にはとても内省的な賛美歌に聞こえます。とはいえそんな裏話は抜きにしても、これは充分に美しい曲。その美しさに奥行きある矛盾が含まれている、という彼の特徴的スタイルを集約したような曲ですね。美しいだけじゃダメなんです。
 
■5.Tak Lagi Sama
クリシェやカトンのような天の声系の美声は「別れるまで秒読み段階に入っている恋人関係(怒りor泣き落としなし)」の「謝っているが本心ではない」シチュエーションが本当によく似合いますな。前半ギターの旋律が”Hotel New California”みたいでかっこいい。中盤から一転してロックな展開へ、あれれ?後半のギターも凄くかっこいいじゃん!ギタリストは…NuKLaに参加しているギタリストのYoel Priyatnaです。
 
■6.Nyanyian Jatuh Cinta
★キ:たしかこの曲は、Katonがツアー先で知り合った地元の無名アーティストと共作した、というような話を本人から聞きました。そのとき元のデモテープも聞かせてもらったけど、正直この曲とは似ても似つかないものだったから、それを彼がどうやってここまで膨らませたのかは謎。でも結果としてすっかりKatonの世界になっている。つきるところアーティストの能力というのは、感受性に引っかかった素材をいかにフィルタリングし身体化させるか、というところにかかっているんだろうな。
 
■7.Hanya Manusia Biasa
:ダンドゥットを歌うカトンの声がTVの再放送映画で観る(聴く)King of Dangdut御大の若い頃のハイトーンボイスに似ていると思ったのは私だけではありますまい。御大が牛耳る、もとい審査委員長を勤めるKDI出身のSiti KDIとのデュエットです。「私はエモーションの申し子」と言ったのはアングン姐さんですが、この情念渦巻くアラビック・ムラユ・ラテンワールドの共作者で仕掛人、サウンドデザイン、ギターは日本のサウンドクリエイターYoichi Ikeda。この温度はいったいどこから…。
★キ:あたくしが自宅の四畳半で作ったもの。Made in 東京都国立市のArabic Dangdutであります。とりあえず歌の録音用にラフなアレンジを送ってくれないか?あとで楽器はプロの演奏と差し替えて編集するからさ、ということだったんだけど・・・・・そのまんま使われてしまった。というわけで音がとっちらかった印象は拭えず、実にくやしい。次回のリベンジに乞うご期待!
 

■8.Bawalah Hatimu
:2005年にシングルリリースされ、カトン自身がクリスダヤンティやグレン・フレドリィらと共に参加したアチェ津波被災者支援のコンピレーションアルバムに収録されたので、すでに聴いたことがある方もいらっしゃるはず。「男女の恋愛をテーマにした曲だけではなくてヒューマニズムをテーマにした曲を作りたかったんだ。Phil Collinsの”Another Day In Paradise”のようなね。特にインドネシアにはそういう曲が必要だよ」。
 

■9. Menanti Jawabmu
★キ:Katon初じゃないかというラップナンバー。打ち込みも本人がやっていてかなりゴキゲン。どこかの島の、海辺の風景が浮かんできそうな曲です。ちなみに曲を共作しているのは彼のアシスタントのYurisくん。ジョグジャの大学で10年以上哲学を勉強していたという変わりダネで、ほとんどKatonの家族と化しているニートな36才です。
 

■10.Duri Di Hati
★キ:もしかしたらこのアルバムで、一番好きかもしれない曲。Pet Shop Boysあたりにも通じる、プラスティックなリアリティーが音からにじみ出てるのがいい。とはいえPet Shop Boysなんて全然好きじゃないんですけどね、この曲は大好き。老衰の漸近線に乗っちゃった東京のような町だと、こうゆう刹那に昇天する感覚にはなかなか出会えないよなあ、とか言われてもわけわかんないでしょ?気になったあなた、一度ジャカルタに飛んでみてください。バリからたった1時間半だよ。
 

■11.Cinta Terlarang
:「君と一緒になるための道が/たとえまがりくねった困難な道でも/僕らの崇高な愛が/彼らの心を開く日が来る」…ってこれは歌の世界ですからね、現実にこったらこと言うヒトを信用してノコノコ付いて行っても碌な目に合わないのは世の常です。って曲の感想になってないか。
 

■12.Pulang Padamu Jogjya
:曲の全体に流れているジョグジャカルタへの感謝や憧憬と空を飛んでいくかのような清涼感のあるサウンドがとても心地よく、こっちまで「よっしゃ!頑張るよ!」という気にさせてもらえる曲。Yoichi Ikedaとの共作。作り手側に変な気負いがないからこそジョグジャカルタへの想いや愛が伝わってきて、ジョグジャに住んでいたアピのデザイナーくんは聴きながら何度も目のあたりをこすってました。彼にもコメントしてもらいましょう。
<ソフィアン:ジョグジャ名物のアヤムゴレンが恋しいアピ編集部デザイナー>
Pulang PadaMu, Jogjaはとっても胸に響きました、というのは僕自身学生時代までをジョグジャカルタで過ごしたから。聴いているうちに街の佇まいや、親切で礼儀正しくて芸術的な雰囲気を漂わせている街の人たちが脳裏に浮かんできました。そのジョグジャカルタが未曾有の震災に見舞われて…みんな悲しく切ない気持ちを抱えています。この曲の歌詞は柔らかい詩的な表現でジョグジャカルタの人々の状態と気持ちを綴っています。“Untuk kembali padamu, Jogja”久しぶりに懐かしいジョグジャカルタへ帰りたい、と強く思いました。
 
 
2007年3・4月号より
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